豊田秀樹、前田忠彦、柳井晴夫 著「原因をさぐる統計学ー共分散構造分析入門」
twitterで統計たん(@stattan)さんが紹介されていたのをきっかけに、豊田秀樹、前田忠彦、柳井晴夫 著「原因をさぐる統計学ー共分散構造分析入門」(講談社)を読んだ。数年前から複雑な要因の因果の連鎖を検証する手法として共分散構造分析に魅力を感じていた。しかし、2、3簡単な書籍を読んでみたものの、相関や重回帰分析と関係が深そうなことがぼんやり分かったものの、非常に分かり難く敷居の高さを感じていた。特に、重回帰分析や探索的因子分析と違い、研究者の裁量で決めなければいけない要素が多そうな点が非常に不気味さを感じさせていた。また、モデルの妥当性についての吟味も難しそうである。我ながら、アホなりに賢明であったと思うが、闇雲にPCソフトウェアに数値を放り込むような冒険は控えた方が良いと考えていた。この書籍を読むことで、少し足下が明るくなった気がする。
この本では、相関分析や回帰分析から始めて、共分散構造分析を生成し、解釈するまでを非常に分かりやすく解説している。本の前半は共分散、相関、重回帰などの統計学基本事項の復習と頭の整理としても役に立つ。共分散構造分析の説明では構造変数と誤差変数、内生変数と外生変数、観測変数と潜在変数という基本的な変数の意味から始め、測定方程式と構造方程式、モデルの妥当性について順に丁寧に説明している。どの段階でも常に具体的なデータを元に作成したモデルを示しながら説明されているので大変納得しやすい。
この本を読むことで共分散構造分析についてかなり具体的なイメージを持つことができた。特に、この手法は分析者自身が今までの知見を元に考察することで自らモデルを構築しその妥当性を示すことが主たる役割であることが理解できた。本当は統計手法は全てモデルを作る意識が必要なのだろうと思うが、共分散構造分析は重回帰や因子分析よりもはるかに予めモデルを意識することをユーザーに要求する手法なのかもしれない。
この本のおかげで共分散構造分析の理解がかなり進んだように思うが、実際に統計ソフトで解析するまでには越えねばならない壁がたくさん残っているような気がする。
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