2014年8月2日土曜日

医療とエビデンス

https://www.facebook.com/amnesictatsu/posts/701702253181200 (2013/12/8) より転載

医療とエビデンス
エビデンス、何て訳すのだろう。証拠とか根拠かな。病院の勤務医から、柄にも無く教員に転職して7年半になる。住む世界が変わると良くも悪くも色々戸惑うことが多い。特に、教育業界には何かを主張する時に客観的根拠をあまり重視しない人が多いことにもどかしい思いをする。
 てなことを考えながら、ほんの20年程度前の医療現場を思い出すと赤面してしまった。今でこそ「エビデンスに基づく医療」が常識の様に語られるが、昔は医療現場でも結構評判が悪かった。「エビデンスが流行だからな。」とか「統計で有意差があってもそれが必ずしも真実ではない。」とか憎々しげに語る先輩医師が少なからずいた。それも後輩から見て出来の悪い先輩ではなく、尊敬すべき人たちでさえそういう雰囲気であった。臨床において何事につけ客観的根拠を重視する考え方が定着してきたのは最近のことの様に思う。
 もちろん、現在においても医療はエビデンスだけでは前に進まない。何しろエビデンスが無い問題が山ほどある。と云うよりも、無数にある医療上の問題の中でエビデンスが十分に揃っているものの方が例外である。特に、患者が理解しやすい説明の仕方、不安を最小限に抑える接し方、闘病意欲を増し将来への希望を持たせるための対応方法など、良好な対人関係を形成するための方法論については、客観的な検討は恐らく少ないと思う。こういうソフトな技術は定量的な分析が難しいと思うが、手の付けようが全くないとも思えない。例えば、応用行動分析の領域に参考に出来る手法が無いだろうか。考えてみれば医師が患者にどのように向かい合うかという問題は、検査、薬物治療、手術などのハードな技術の問題以上に医療の本質につながる重要問題だと思う。幾ら突き詰めても客観化出来ない「技」の部分が残るとは思うが、根拠を明確にできることはした上で残された部分で技を振るうことをことを目指すという意識は必要だと思う。

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