2014年8月2日土曜日

本田秀夫「自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える『生きづらさ』の正体」

https://www.facebook.com/amnesictatsu/posts/723289291022496 (2014/1/12) より転載

本田秀夫「自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える『生きづらさ』の正体」という本を読んだ。自閉症スペクトラムの子供達(and 大人)をどうサポートするか、著者の経験に基づく考えを述べている。客観的データをもとに論じているのではないため、違う意見を持っている人を論理的に説き伏せられるような書籍ではない。しかし、僕にとっては非常に腑に落ちる内容であった。特に、思春期以前にはできるだけの援助をし、失敗させることを可能な限り避け、人の助けを借りれば世の中結構なんとかなるもんだという思いを抱かせることを第一に考えることは、僕としては非常に納得できる意見である。この考え方の延長線として、得意なことを十分に保障することを優先し、苦手克服の特訓を極力避けるようにという主張にも僕は全く賛成である。しかし、こういった考え方が世間、特に教育関係者に受け入れられるかというと、なかなか難しいだろうなと思う。
 著者は自閉症スペクトラムの連続性を現時点で障害のない人たちまで含めて広く捉えている。そして、その特性が生活に支障があるかどうかで『障害』かどうかが決定するという。このように生物学的概念と社会学的概念をきちんと分けた考え方も、僕自身の考えと一致している。医師は診断をカテゴリー的に捉える傾向が強いと思っていたので、同様の考え方の長い臨床経験を有する医師が他にもいることを知り、読んでいて心強く感じた。
 著者は自閉症の子供達に自立スキルとソーシャルスキルを指導する際に「合意」が重要であると述べている。そして構造化は合意を教える最初のステップであると説明している。僕自身は本人が合意することを漠然と意識しており、本人がどう思っているか聞くことや、本人の腑に落ちることが必要であることを保護者や教師に説明することは度々あった。しかし、合意が重要であることを明確に言語化していなかったように思う。改めてこの説明を読んで、目を開かされた思いがした。
 自分が日頃考えていたことに非常に一致した内容であること以外に客観的根拠は無いが、是非多くの保護者や教師・保育士に読んで欲しいと思う本である。異論のある人もいるかもしれない。しかし、自閉症スペクトラムの支援は柔軟で多面的な発想が必要だと思う。少なくとも、こういう考え方もあるということを知っておくのは悪くないと思う。

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