2026年4月11日土曜日

自閉スペクトラム症の傾向 1

  自閉スペクトラム症の傾向のアセスメントについても、基本的には注意欠如多動症の傾向と同様の考え方で進めることができます。自閉スペクトラム症でも、現在最も多用される診断基準はDSM-5-TR[1]に掲載されたものです。DSM-5-TRの診断基準では、自閉スペクトラム症は2つの基本的特徴で構成されます。それぞれA項とB項に整理されており、A項は「社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥」、B項は「行動、興味、または活動の限定された反復的な様式」です。前者には(1)から(3)までの3項目、後者には(1)から(4)までの4項目の具体的な症状が記載されており、注意欠如多動症の時と同様にそれぞれに当てはまるかどうかを検討すれば良いのです。ただ、注意欠如多動症の診断基準の症状項目の記載はかなり具体的で言葉通り読めばおおよそイメージできるものですが、それに比べて自閉スペクトラム症の診断基準の症状項目の表現はかなり曖昧です。見た目にはかなり異なる状況が、同じ症状項目に該当します。そのため、具体的にはどのような行動が各症状項目に当てはまるのかを予め知っていないとその項目に当てはまるかどうかの判断が難しいと思います。各症状項目が具体的にはどのような行動を想定しているのか、次節以降に順次解説したいと思います。次節以降の文中、『』内はDSM-5-TRの自閉スペクトラム症診断基準からの引用です。

 対象となる子供のアセスメントにおいては、日常生活全般を思い浮かべながら個々の項目に該当するかどうかを考えていきます。特にA項は対人関係の問題なのですが、平常のごく落ち着いた状況で観察できる特徴かどうかを意識する必要があります。強い不安に駆られているときや、怒っている状態などでは他者との関わりに失敗することがよくあります。このような状況での他者への関わりの失敗だけを取り上げてA項の症状項目に当てはめない方が良いと思います。注意欠如多動症のある子供でも、その不注意さや衝動性によって他者の気持ちに気づかないことがよくあります。個々の事例では判断が難しいことも多いのですが、できるだけ自閉スペクトラム症による行動特徴と区別する意識を持っておくのが良いでしょう。

 一つの症状項目に含まれる振る舞い方には様々なものがあります。一つの行動が見られるだけで、ある子供について特定の症状項目に該当すると判断しないようにしましょう。日常生活の複数の状況下で特定の症状項目に当てはまる振る舞い方が複数見られるときにその項目が該当すると考えてください。

 医師が厳密に評価し自閉スペクトラム症と診断するときには、現在だけではなく過去に症状項目に当てはまる特徴があったかどうかも考慮します。しかし、学校園の先生方のアセスメントの目的は診断することではありませんから、先生方が見ることのできる範囲内で評価すれば良いと思います。注意欠如多動症傾向のアセスメントと同様に「異常」か「正常」か、という観点にこだわらないようにしましょう。あくまで同年齢の子ども集団の中で目立つかどうか、気になるかどうかというご自分の主観に沿って評価していただければ良いと思います。

参考書:

[1]APA、日本精神神経学会、他「DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院

「学校園でできるアセスメント」:目次


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