2026年3月31日火曜日

注意欠如多動症の傾向 1

  注意欠如多動症の基本的特徴は不注意、多動そして衝動性です。落ち着きのなさを主訴に外来を受診した子供の親が「この子が多動かどうかを知りたくて」とおっしゃることがよくあります。そういう時、この子を見ていてよく動くなあ、じっとできないなあと思ったことがありますか?と質問すると、「そうです、よく動くんです」といった返事が返ってきます。私は、そう感じるのなら多動と言えば良いですよ、と返事をします。一般の方は「多動」は専門家が何かの方法で判定するものだと考えておられることが多いようです。しかし、そのような特殊なものではありません。日常的な言葉の意味通りに、多動かどうか、衝動的かどうか、不注意かどうかを判断すれば良いだけなのです。当然、教師や保育者にとっては簡単な話です。子供の普段の振る舞いを、何かの課題に取り組む状況も含めて直接観察している立場ですし、同じ年齢の子供の標準的な状況を踏まえた上で判断できるのですから。

 そうは言っても、不注意、多動、衝動性のアセスメントをしっかりと行うのなら、何らかの物差しが欲しくなります。そういうとき、前節で紹介したDSM-5-TRの注意欠如多動症診断基準が参考になります。実際に医師が注意欠如多動症を診断するときに用いるものです。DSM-5-TRの注意欠如多動症診断基準では具体的な症状項目が2項に分けられています。(1)不注意と(2)多動-衝動性です。(1)不注意には(a)から(i)までの9つの症状項目が、(2)多動-衝動性には(a)から(i)までの9つの症状項目が記載されています。多動と衝動性は関連が強いので一つにまとめられています。次節以降にそれぞれの症状項目を具体的に説明しましょう。次節以降の文中、『』内はDSM-5-TRの注意欠如多動症診断基準からの引用です。注意欠如多動症診断基準に記載された症状項目は結構わかりやすいのではないかと思います。恐る恐る最初に注意しておきますが、「しばしば」は頻度が高いという意味です。英語なら、"often/frequently"です。「そんなこと、知っとるわい!」と思った方、我慢してください。私は10年くらい前まで12年間ほど、保育士・教師の養成課程がある大学で講義をしていたのですが、「しばしば」は「ときに」「たまに」と同義だと思っていた学生がすごく多かったのです。

 対象となる子供のアセスメントにおいては、日常生活全般を思い浮かべながら個々の項目に該当するかどうかを考えていきます。ある特定の時、例えば昨日の図工の時間には妙にはしゃいでよく喋っていたなあなどというごく限定された状況のみに基づいて判断してはいけません。過去半年間くらい全体を思い浮かべながら判断します。

 該当するかどうかは直感的に当てはまると感じるかどうかなのです。もう少し具体的にいうなら、同学年の子供集団の中で明らかに目立つかどうか、多いかどうか、日々の問題になっているかどうかに基づいて考えてください。「明らかに」ということが重要です。その際、それぞれの症状項目は大なり小なりすべての人に見られるものであることを意識しておく必要があります。子供集団の中で明らかに目立つ程度に逸脱しているときに当てはまると考えるようにすると安全です。また、平均的な子供と比べて異常か正常かを客観的に判定しようと考えないでください。真面目に考えれば考えるほど泥沼にはまります。あくまで自分の主観の中で目立つかどうか、気になるかどうかということで判断してください。もともとこのような症状を客観的に判定する方法はありません。とどのつまりは主観で決まりますので、気楽に考えれば良いと思います。

「学校園でできるアセスメント」:目次



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