https://drive.google.com/file/d/12O2PnRKzTsP4iDQvMfCIUM-PK_VSHwvn/view?usp=sharing
「発達障害を伴う子供を支援するために
—保育者や教師が最初に知っておくと良いこと—」
20230313版
はじめに
この文章は、保育者や教師として子供の健全な発達を支えるために日々奮闘されている方を念頭に書きました。私は子供の神経疾患の診療を専門とする医師ですが、20年くらい前からは特に発達障害を伴う子供達のための専門外来で診療してきました。その経験の中でつくづく感じることがあります。それは、発達障害を伴う子供達に対する支援の中で医療や医師にできることの少なさです。明らかに発達障害を伴い日常多くの困難さを抱えている子供が次第に暮らしやすくなっていくとき、多くの場合は家族、保育者、教師の関わり方の良さが、物事が改善する上での大きな力になっています。もちろん児童発達支援事業などの療育施設の職員が大きく貢献する場合も少なくないですし、中には薬物療法など医療抜きには実現できない対応が必要となることもあります。しかし、療育や医療の関わりが大きい事例であっても、家庭と学校園での対応が適切でなければなかなか事態は良くなりません。もちろん家族、多くは親の存在は非常に大きいです。しかし、発達障害を伴う子供達を職業的に支えるもっとも中心的な存在は、学校園で働く保育者や教師の方々だと考えています。
2000年頃以降10年くらいかけて、日本国内の発達障害を含む何らかの障害のある子供への教育についての考え方が、それまでの特殊教育から特別支援教育へと大きく変わりました。その後さらに10年くらいが過ぎた今、全ての学校園で障害を伴う子供達の個別のニーズに対する合理的配慮をしなければいけないという意識が保育・教育現場で浸透してきたと思います。発達障害を伴う子供達への支援についても多くの教師・保育者の先生方は前向きに努力されていると感じています。しかし一方で、どのような配慮をしたら良いのか悩まれる方々も多いのが現状ではないでしょうか。医学、心理学、障害児保育・教育など関連する様々な分野をしっかり勉強しようと頑張っていらっしゃる方も多いと思います。しかし、今現在、支援を必要とする子供達が先生方の目の前にいる状況です。しっかり勉強してから支援しましょうなどとのんびり考えていられない現状があります。そのような状況で苦しんでいる先生方が、とりあえずまず知っておくと良いのではないかと思えることをこの文章では解説しています。
発達障害に関して解説する本であれば、まず様々な病型についての説明から始まることが多いと思います。しかし、この文章では最初に具体的な接し方の配慮から始まります。難しい理論を理解せねばできないことや特殊な技術が必要なことは説明していません。ここで説明することは、どんな子供であっても配慮しておいて損はないことです。次に、発達障害を伴う子供の支援において医療をどの様に位置付ければ良いかを解説しています。さらに、今後発達障害について詳しい知識を身につけていくにあたり、発達障害全体に共通する考え方を説明します。最後に、国際機能分類(ICF)と合理的配慮について拙い解説をつけておきます。
長い文章を読むことが苦手な方は、とりあえず第1章だけ読んでいただけるだけでもありがたいです。この文章では発達障害の各病型についての医学的な詳細は解説していませんし、関連する心理学や福祉領域のことも説明していません。この文章さえ読めば全てが解決するというものでは全くありません。また、学術的文章でもありませんので、記述する一つ一つのことの出典は書いていません。中には私の勘違いや不正確なことも書かれている可能性があります。お気づきのことがあれば、連絡していただけると幸いです。この文章はあくまで出発点です。これを取っ掛かりにして、さらに細かい専門的な事柄を勉強していただけると幸いです。
なお、この文章では保育者と教師の両方を意味する言葉として「先生」と表記することが多いです。第1章第3節でも触れているのですが、「先生」という言葉には色々思うところがあり、保育者と教師を指す名称として用いることに若干の抵抗があります。しかし毎回「保育者と教師」と書いていると少しくどい感じがするため、あまりややこしく考えずに「先生」を多用しています。
この文章は以下のURLからダウンロードすることができます。時間はかかると思いますが、気がついたことを改訂していく予定です。したがって、他の方に紹介していただく際はpdfを渡すのではなくURLを伝えてください。
https://drive.google.com/file/d/12O2PnRKzTsP4iDQvMfCIUM-PK_VSHwvn/view?usp=sharing
閲覧、ダウンロード等は自由にしていただけます。商業的な利用を除き、自由に利用していただいて結構です。お読みになって間違いなどに気づかれた方は、ご連絡いただけると幸いです。
2020年12月
福山市こども発達支援センター
荻野竜也(oginotatsuya@gmail.com)
履歴
Ver. 1:2020年2月20日
Ver. 2:2020年3月21日
・節ごとのまとめを作った
・その他細かい加筆、修正、削除
Ver. 3:2020年3月31日
・挿絵を付けた
Ver. 4:2020年6月15日
・第1章第2節のかんしゃくへの対応の解説に佐久間 徹(2013)による反応強度分化手続きを参考にした記述を追加した。合わせて佐久間 徹の著書を第4章で紹介した。
Ver. 5:2020年12月13日
・国際生活機能分類と合理的配慮の解説を加えた。
Ver. 6:2021年1月6日
・pdfを保存するURL表記の誤り、誤字の修正。
Ver. 7:2022年3月13日
・第1章第2節に知能の高い子供への対応を追加した。
Ver. 8:2022年6月5日
・第1章第2節に文献情報を追加した。
Ver. 9:2022年8月8日
・本文章のpdfを保存するURLの短縮版を作成。
Ver. 10:2023年3月13日
・第1章第2節第8項「指示の出し方」を下記書籍の記載を参考に書き直した。
0 件のコメント:
コメントを投稿